研究概要 |
Tetrahydrobiopterin(BH_4)は,Nitric oxide(NO)合成酵素の補酵素であり,その代謝が内皮由来血管弛緩因子であるNOの生合成に重要な役割を果たしていると考えられている.胎盤循環におけるNO代謝の重要性が報告されていることから,胎児胎盤系BH_4代謝研究の重要性がさらに高まってきたものと考えられる.胎児胎盤系BH_4代謝の全貌およびその病態生理学的意義を検討する目的で,平成13年度に以下のごとく研究し,成果を得た. 1.ヒト妊婦および胎児の血漿中NeopterinおよびBiopterin濃度 母体静脈および分娩時臍帯動静脈血漿中の濃度をHPLC法で解析した.その結果,母体に比して胎児血漿中NeopterinおよびBiopterin濃度が有意に高いこと,臍帯動脈でのBiopterin濃度が臍帯静脈に比して有意に高いこと,胎児血漿と母体血漿濃度の間に有意な相関関係が存在することが判明した.このことから,ヒト胎児に高活性のBH_4生合成系が存在すること,胎盤側に比して胎児側に生合成系活性が高いこと,胎盤を介してBH_4の酸化代謝産物であるBiopterinが母体側に移動していることが示唆された. 2.妊娠ラットへのBH_4生合成阻害剤投与実験 BH_4代謝の妊娠動物およびその胎児における意義を知るために,BH_4合成の律速酵素であるGTP cyclohydrolaseの阻害剤を妊娠ラットに投与し,血圧および児体重,血中Catecholamine濃度を解析した.その結果,非投与群に比して投与群の有意な血圧の低下および児体重の低下がみとめられたが,血中Catecholamine濃度に有意差は認められなかった.このことから,BH_4代謝が妊娠動物の全身血圧および子宮血流の維持に重要な作用を有しており,その作用はCatecholamineを介さない経路であることが判明した.現在,この実験系におけるBH_4代謝関連酵素およびNOの酸化物であるNO_2^-およびNO_3^-の血中濃度を解析中である.
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