母体血漿中に胎児由来の浮遊DNAが循環している。我々はDYS14遺伝子というY染色体に特異的な配列を用いて定量にPCRを行い分析した。その結果、胎児由来の浮遊DNA量は母体血中の胎児細胞数(1ml当たり1個)の37倍と大量に存在することが分かった。さらに、母体血清中の胎児由来浮遊DNAは分娩後2時間で消失し、非常にTurnoverが早いことも示された。この母体血清中の胎児由来浮遊DNAのある部分は母体血中に移行した胎児細胞の破壊に由来すると考えられるが、母体血中に移行した胎児細胞の破壊のメカニズムについては明らかではない。そこで母体血中に移行した胎児細胞の除去にアポトーシスが関与しているとの仮説に基づき、母体血中の胎児細胞のアポトーシスについて検討し、母体血中の胎児由来細胞の42.3%がDNA断片化を示すTUNEL染色陽性であり、母体血からの胎児細胞除去にアポトーシスが関与している事を昨年示した(Prenat Diagn 2000)。本年、臍帯血を低酸素及び高酸素環境下で培養し、臍帯血中の有核赤血球数の変化を、顕微鏡下での数の変化、ガンマヘモグロビン、DNA断片化を見るTUNELで染色し、Two Color Flow Cytometryで検討した。20%酸素環境下では1%酸素環境に比較し有意に有核赤血球が減少することがわかった。また、高酸素環境で有核赤血球にアポトーシスが起こることも明らかになり、論文投稿中である。
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