研究概要 |
研究調書に記載した計画に基づき、妊娠6-9日目の間にICRマウスにレチノイン酸約12.5mg/kgを単回投与し、胎児の奇形を誘導している。18日目(満期産)または9日目に屠殺して胎児を得ている。対照としてレチノイン酸非投与の胎児も同様に得ている。現在満期産(18日目)の胎児の肉眼的観察では、耳介低位、副耳、眼球突出、小眼症、外脳症、小顎症、口蓋裂などが認められた。外耳奇形の発生は、妊娠7日目投与群の胎児に集中しており、外耳の形成異常の成立臨界期は7日目前後であると結論した。また、得られた18日目胎児をホルマリン固定・パラフィン包埋して連続切片を作成し、聴器の奇形を確認したところ、7日目投与群胎児の病理標本で、内耳の形態は保たれていたが、外耳・中耳では外耳道閉鎖、耳小骨奇形、中耳腔の低形成など形態学的変化が著明であった。 ついで7日目投与群の妊娠マウスを9日目に屠殺して胎児を得、同様にパラフィン包埋して切片を作成している。細胞死(アポトーシス)によって生じたDNA断片をdUTPで末端認識するTUNEL法による免疫染色を行い、細胞死に陥った細胞を光学顕微鏡で観察した。その結果、レチノイン酸投与群では、対照群に比し耳胞腹側に現れるTUNEL陽性細胞数が明らかに少なく、また、第一・第二鰓弓の中枢側付近に密集して見られるTUNEL陽性細胞の密度が低いことが示された。これらの結果はレチノイン酸投与に伴い、アポトーシスの発生が修飾されていることを示していると考えられる。 本研究のこれまでの結果は1つの国内学会、2つの国際学会(2000年10月浜松市における第10回日本耳科学会総会および2001年2月および200年1月米国フロリダ州におけるAssociation for Research in Otolaryngology, Midwinter Meeting)にて発表した。英語論文は投稿準備中である。
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