1.中耳貯留液の採取 承諾を得て、95例の成人から鼓膜切開術または鼓膜チューブ挿入術を行った際に採取した。 2.MIF、IL-1β、TNF-α、エンドトキシンの測定 MIF、IL-1β、TNF-αはELISA法を用いて則定を行った。それぞれの検出感度は10pg/mlであった。エンドトキシン濃度はエンドスペック法で測定した。総蛋白濃度はBCAアッセイで測定した。すべての検体は2度測定し、測定値を平均した。MIF、IL-1β、TNF-α、エンドトキシンの濃度は標準化のため、総蛋白濃度(mgTP/ml)で割った値を用いて検討を行った。 3.結果 95例中MIFは93例(96.8%)から検出され、エンドトキシン、IL-1β、TNF-αはそれぞれ92例(96.8%)、12例(12.6%)、5例(5.3%)から検出された。MIF、エンドトキシンはIL-1β、TNF-αに比べて有意に検出率が高かった。IL-1βとTNF-αの間には有意な検出率の差を認めなかった。MIF、エンドトキシン、IL-1β、TNF-αの濃度はそれぞれ1467.13±87%.80、160.22±481.56、21.31±157.79、6.76±57.13(pg/mgTP)であった。MIFはエンドトキシン、IL-1β、TNF-αに対して有意に高い農度を示した(p<0.001)。それぞれの相関について検討したところMIFとエンドトキシンの農度の間には有意な正の相関を認めた(r=0.627、p<0.0001)。 4.まとめ 今回の検討において中耳貯留液からMIFがエンドトキシンと同様に高頻度に検出され、また、その濃度はエンドトキシンIL-1β、TNF-αに比べて有意に高かったことからMIFは滲出性中耳炎の病態形成に深く関与していると思われる。また、MIFの濃度がエンドトキシン、IL-1β、TNF-αと正の相関を示したことから、エンドトキシンを起点とする滲出性中耳炎の発症におけるサイトカインネットワークの中でMIFは重要な働きをしていることが推察された。
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