研究概要 |
血小板放出物質(platelet release products, PRPr)によるヒト好中球の補体を介する貪食機能亢進の機構を明らかにするために、好中球のオプソニン化羊赤血球(SRBC)との結合と、オプソニン受容体抗原の発現におけるPRPr・ATP・ADPの影響を検討した。 SRBCとロゼットを形成した好中球の割合はPRPrで刺激することにより増加した。これはPRPr中のATPとADPの作用によると考えられた。またATPとADPはiC3bを介した結合を増強すると考えられた。Flow cytometryではPRPrはCR1とCR3の発現を増加させたが、ATPとADPには発現の増加は認められなかった。ATPとADPで刺激した好中球は、それぞれ貪食能の亢進を認めた。SRBCを強制的に付着させた好中球は、PRPr・ATP・ADPで刺激した場合と同様のレベルまで貪食の亢進を認めた。以上よりPRPrにおけるATPとADPはこれらのレセプターとの結合力を増加させることにより、iC3bを介する好中球の貪食を増強していることが示唆された。 PRPr中の血小板由来高分子量白血球貪食能亢進因子(macromolecular suppressor of phagocytosis released from platelets, MAPP)によるヒト白血球における活性酸素産出についてchemiluminescenseを用いて検討したが現在までのところ明らかな影響は認められない。またMAPP・ATP・ADPの悪性腫瘍の転移への関与を検討するため、喉頭扁平上皮癌細胞の血管内皮細胞への接着の影響について検討中である。
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