研究概要 |
Meniere病治療のための基礎となる実験的内リンパ水腫の制御を目的に以下の2実験を行った。 1.中耳圧治療:(方法)一側の内リンパ管遮断後4週を経過したモルモットの鼓膜にポリエチレンチューブを14日間挿入留置した(N=12)。またこのチューブより21 cmH20の陽圧を1時間、1日2回、14日間負荷した(N=12)。対照群として、内リンパ水腫のみ作製群(N=13)、正常耳にチューブのみ留置群(N=5)、正常耳にチューブ留置の上、陽圧負荷群(N=6)を用いた。遮断14日目に断頭し組織学的標本を作製し、水腫軽減効果を見るとともに中耳・内耳への副作用についても検討した。(結果)蝸牛の有毛細胞変性所見については水腫のみ、チューブ留置、チューブ+陽圧負荷の3群間に差を認めなかった。また、内リンパ腔の体積についても3群間に有意差を認めなかった。チューブ留置群、とりわけ陽圧負荷群においては中耳炎が高度に惹起された。(結論)すでに進展した内リンパ水腫を有する耳に圧のみ負荷する治療は中耳炎の副作用のみで内リンパ水腫の治療効果は認められない。 2.高気圧酸素療法:(方法)22匹のモルモットで一側の内リンパ管を遮断後、高気圧チェンバー(Reimers Engineering, B-11)にて治療した。純酸素を2 ATA(14.7psi)もしくは1.5 ATA(7.35psi)にて1時間、1日1回、2週間に渡って加療した。内リンパ水腫のみ作製した19匹を対照とした。14日目に断頭、組織学的に水腫の変化、感覚細胞の変化を観察すると共に気圧外傷の有無を検討した。(結果)高気圧酸素を負荷した実験群と対照群では内耳感覚器細胞の変性、血管条の変化に差を認めなかった。内リンパ水腫については、蝸牛全体では差を認めなかったが、高回転(3、4)では有意に体積が減少していた。実験群では高度の中耳粘膜の肥厚および骨新生を認めた。(結論)高気圧酸素療法は中耳炎の副作用は認めるものの、ヒトMeniere病の病初期においては有効であると考えられた(投稿中)。
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