研究概要 |
半規管は,膨大部のクプラにある感覚細胞が,内リンパ液の動きを感受して,頭部の運動を正確に知ることができるとされている.この内リンパ液の動きは,外耳からの温度刺激を加えることによっても引き起こすことができ,これを応用したのが平衡機能検査の一つとして広く行われているカロリックテストである.カロリック刺激は一般的に,冷水・温水を用いる方法とエアー(温風・冷風)を用いる方法に大別される.水を用いる方法では,今回の研究で実施予定の両側同時に刺激することが困難であり,エアーカロリックの方がより定量的で安定している点で優れるためこちらを採用した.しかし,水に比べ,空気の方が熱伝導が悪いため,水より強い刺激が必要となる.刺激の強さは,空気の温度,流量,刺激時間により規定されるが,鼓膜に直接風が当たることになるため強すぎる刺激では問題であり,今回の予備実験では,健常被験者において至適な刺激を設定した.また被験者の頭位については一般的に前屈30度で水平半規管が水平となると報告されているが,個人差はあるため,両側同時にカロリック刺激を加え1分間経過し定常状態に達したと判断された時点で,眼振が誘発されていないことを確認することとした.一方,回転椅子は制御盤から角速度,角加速度を正確に電気信号として出力し,コンピュータに取り込めるようにしたが,高加重にあってもまた,速い刺激(大振幅,高周波数)においても滑らかな運動を保証するためには,駆動モーダー,制御ソフトの両面から見直しているところである.これまでの実験では,最大角速度が30から150度/秒で行っていたが,この間のVestibulo-ocular reflex(VOR)の利得はほぼ一定であったため,さらに大きな刺激を安定して出力できるよう改良を加えているところである.
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