研究概要 |
(目的および対象)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は多くの癌の浸潤・転移に重要であることが知られているが,唾液腺癌での報告は極めて少ない.癌の漫潤・転移に特に重要と考えられているMMP-2,MMP-7の産生と活性化を中心に本研究は計画された.癌組織16例と正常唾液腺組織24例でMMPsとインヒビターであるTIMPsについて検討した。(方法および結果)1)組織ホモジネート中のMMP-1,-2,-3,-7,-8,-9,-13,MT1-MMP, TlMP-1,-2濃度をサンドイッチエンザイムイムノアッセイ法で定量した.MMP-1,-2,-13,MT1-MMP, TIMP-1は正常より癌で有意に高値を示した(p<O.05)。特に粘表皮癌は腺様嚢胞癌に比してMMP-1,-8,-9,-13で有意に高値を示し(p<0.05),TIMP-2では低値の傾向を示した.MT1-MMPの産生は両群間に有意差はなかった.MMP-7はイッムノプロット法,RT-PCR法で正常と癌および粘表皮癌と腺様嚢胞癌の間で差を認めなかった.2)ゼラチンザイモグラフィーでproMMP-2の活性化率を検討したところ,正常より癌で有意に高値であった(p<O.01).さらに粘表皮癌は腺様嚢胞癌より有意に高値を示した(p<0.01).(考察)1)粘表皮癌は腺様嚢胞癌のMMPsとTIMPs産生様式は異なっており,特にMT1-MMPの産生は両群間に差を認めないがゼラチンザイモグラフィーでproMMP-2の活性化率の違いが顕著であった.2)腺様嚢胞癌ではMT1-MMPによるproMMP-2の活性化をTIMP-2の過剰産生が抑制する可能性が示唆された. 今後は症例数を増やし,MT1-MMP, MMP-2,TIMP-2の組織内局在とin situ zymographyによるマトリックス分解活性の局在を検討し,投稿する予定である.
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