研究課題
生後の内耳において恒常的にアポトーシスが生じている組織として、Greater epithelial ridge(GER)に着目した。GERは未熟な内耳組織に存在し、生直後から12日齢までの蝸牛内有毛細胞の更に内側に認められ、成熟後の蝸牛では消失する。平成13年度の当該研究において、GERでは生後6日齢を境に、急激なアポトーシスが生じることを明らかにした。本年度は、アポトーシスの実行因子としてのカスパーゼの発現をGERにおいて検討した。現在までに、カスパーゼは1から14までのサブタイプが知られている。種々の死のシグナルを受け取った後に、活性化したカスパーゼ8がカスパーゼ9を活性化させて、更にほかのサブタイプを活性化して、というようにカスケードが形成されている。カスパーゼ3は、その最下流に位置し、実際に細胞にダメージを与える実行因子と考えられている。当該研究では抗カスパーゼ3、9、12、14抗体を使用し、マウスGERでの生後3日齢、6日齢での発現を比較検討した。カスパーゼ3と12とはほぼ同様の発現を示し、生後6日齢のGERにおいて最もよく染まった。陽性細胞の核は分葉化され、形態的にもアポトーシスを呈していた。カスパーゼ9は、各有毛細胞、支持細胞の核に弱く発現しており、GERには認められなかった。潜在的に核内に存在しているが、内耳発生・成熟に関するアポトーシスには関与していないと考えられた。カスパーゼ14は、内外有毛細胞に伸びる有髄神経末端に発現がみられた。GERの消失にはカスパーゼ3と12とが関与したことから、有毛細胞のアポトーシスにもこれらのアポトーシスが重要な働きを示すと考えられる。
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