昨年と同様の方法でさらに15匹のネコを用いて喉頭の電気刺激を行った標本を作製した。解析は、昨年度に作成した標本を会わせて、喉頭電気刺激標本を20匹、対照標本5匹を用いて行った。上喉頭神経を電気刺激してから声門閉鎖反射が起こるまでの潜時は、7ミリ秒4匹、8ミリ秒4匹、9ミリ秒7匹。10ミリ秒以上が5匹であった。 Fos陽性細胞出現部位は、電気刺激群、対照群ともに延髄孤束核、網様体、疑核、三叉神経脊髄路核に多かった。電気刺激群では、このほかに前庭神経核、迷走神経背側運動核、最後野、外側網様核、後疑核にも出現した。電気刺激群では、刺激側のFos陽性細胞数が、非刺激側と比較して有意に多くなっていた。電気刺激群が対照群と比較して、Fos陽性細胞数が明らかに多かったのは、孤束核、網様体、疑核であった。この3部位でのFos陽性細胞数は、孤束核、網様体、疑核の順に減少していた。 コレラトキシンで標識された甲状披裂筋支配運動ニューロンは、舌下神経核吻側端の尾側よりの部位より、下オリーブ核尾側部の範囲に出現し、疑核内ほぼ中央に散在性に小から中型細胞(短径50μm以下)として認められた。疑核内では、Fos陽性細胞と一致した細胞が認められた。運動ニューロンの樹状突起は疑核背外側方向に伸展し、主に網様体の孤束核腹側部でFos陽性細胞と接触した所見が認められた。 これらの結果から、喉頭閉鎖反射の孤束核から疑核まで至る伝達系路の一つとして、下部延髄網様体の介在ニューロンが作用していることが確かめられた。また、喉頭閉鎖反射には、上喉頭神経を刺激してから喉頭閉鎖が起こるまでの潜時が長い場合があり、下部延髄のみでなく、高位の中枢を介する反射経路も存在すると考えられた。
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