平成14年度は平成13年度の研究で得られた糖尿病網膜症の網膜新生血管モデルと考えることが出来る酸素誘発虚血網膜症における無血管領域のVEGF-GFPマウスを用いたVEGFプロモーターactivityの亢進に対して血管新生治療がどのように影響するかを検討した。さらにそれらの新生血管抑制効果についても検討を行った。まず現在臨床的に血管新生抑制治療として唯一確立されている光凝固療法を酸素誘発虚血網膜症に対して行った。その結果、VEGF-GFPの蛍光強度を測定することで求めたVEGFプロモーターactivityの亢進は有意に抑制され、未治療群に比較し有意に新生血管を抑制した。Tie2-GFPマウスによる網膜血管の観察では、光凝固治療群の無血管領域が未治療群に比較して縮小していることが明らかになり、網膜虚血の改善によりVEGFプロモーターactivityの亢進が抑制されていることが考えられた。次に実験的に脈絡膜新生血管抑制作用が示されているステロイド剤のトリアムシノロンの網膜新生血管抑制作用について検討した。トリアムシノロンは、最近臨床的に硝子体手術の際に硝子体の可視化のために用いられており、その網膜新生血管抑制作用の有無は今後の臨床応用が期待されるため重要であると考えられる。今回の検討の結果、トリアムシノロンの硝子体注入は酸素誘発虚血網膜症において網膜新生血管を未治療群に比較し有意に抑制した。VEGFプロモーターactivityに関しては両群間に有意な差を認めず、Tie2-GFPマウスによる網膜血管の観察でも、治療群の無血管領域と未治療群のそれとの間に有意な差を認めなかった。これらの結果と過去の報告よりトリアムシノロンの網膜新生血管作用機序として新生血管の進展課程におけるVEGFの抑制とは異なる細胞外マトリックスの融解等の課程に作用すると考えられた。
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