成熟哺乳動物の視神経切断後に、網膜神経節細胞がアポトーシス至るメカニズムを解明する目的で、視神経切断前後のラット網膜より単離したmRNAからサブトラクションライブラリを作成し、視神経切断後に網膜における発現量が上昇する遺伝子の単離した。視神経切断後に発現が上昇する遺伝子は、細胞死に能動的に関与していると考えられる。これらの遺伝子群について、RT-PCRを行うとともに視神経切断前後のラット網膜切片上においてin situ hybridizationを行った。このような分子の1つHrkはBH3 domain only protein、RT-PCRでは視神経切断前には網膜における発現はみとめられなかった。視神経切断後、12時間後より網膜における発現が認められ、切断後3日目をピークとし、1ケ月後までその発現は持続した。ついで、in situ hybridization histochemisitryを施行したところ、視神経切断前には網膜上での発現は認められないことが確認された。一方、切断後3日目の網膜ではHrkのシグナルは神経節細胞層にのみ認められた。シグナルは神経節細胞層の一部の細胞にのみ発現していた。これらの細胞は網膜神経節細胞の一部であることが明らかとなった。視神経切断後、網膜神経節細胞の細胞死は1月以上続くことが知られており、Hrkは網膜神経節細胞の一部にのみ発現すること、また、発現が長期にわたることから、視神経切断後Hrkが網膜神経節細胞の一部に順次誘導され、その細胞が次々とアポトーシスに陥るメカニズムが考えられた。
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