マウスの同所性角膜アログラフト移植モデルにおいて、角膜上皮を除去したドナーアロ角膜の実質表面に、レシピエントと同系の新鮮角膜上皮を被覆してキメラ状に再構築した角膜組織(キメラ角膜と称する)を作成し、移植後の拒絶反応を回避できたことを既に報告した。14年度には、キメラ角膜移植における拒絶反応回避の機序が、active immune suppression(優性抑制)かimmunologic ignorance(免疫学的無視)かを明らかにするための実験を行った。キメラ角膜移植の2週後または8週後の時点で、角膜移植片が透明生着しているレシピエントに、ドナー由来の脾細胞を皮下注射して免疫し、その後の角膜移植片の生着を観察した。その結果、透明生着していた角膜移植片は、脾細胞の皮下注射の後3週以内にほぼ全て拒絶された。したがって、キメラ角膜移植によりactive immune suppressionは誘導されていないことが示された。さらに、透明生着しているキメラ角膜移植片がアロ抗原を発現しており、脾細胞による全身的なアロ抗原感作によって引き起こされた免疫反応の標的となることが示された。以上の結果より、キメラ角膜の拒絶回避の機序が、immunologic ignoranceであることが強く示唆された。 また、キメラ角膜作成における同系の角膜上皮の代用組織として、羊膜上皮アログラフトの免疫特権と免疫原性の解析も行った。その結果、羊膜上皮は、種々の免疫抑制因子を発現し、腎被膜下では生着する免疫特権を有していたが、一方、炎症性因子の遺伝子も発現しており、眼表面に移植された羊膜上皮アログラフトは、アロ抗原特異的遅延型過敏反応を誘導し、拒絶反応を生ずることがわかった。
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