上皮欠損後角膜の創傷治癒過程でのルミカンの役割の研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13771038
• 研究種目: 奨励研究(A)
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 雑賀 司珠也 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40254544)
• キーワード: ルミカン / 創傷治癒 / 上皮細胞 / プロテオグリカン

研究概要

以前に我々が報告したマウス角膜上皮欠損後の創傷治癒過程にある上皮細胞でのルミカン発現を新しく作成したポリクローナル抗体でも確認できた。ルミカンノックアウトマウスでの角膜上皮創傷治癒過程での基底膜領域と上皮下の実質の微細構造を透過電子顕微鏡で確認できた。上皮創傷治癒過程では、実質のコラーゲン線維の配列も障害されるが、ルミカン欠損では配列異常が正常マウスに比較して顕著であった。一方、上皮下基底膜は、非創傷状態、上皮創傷治癒過程崩じて、ルミカン欠損による形態学的変化は検出されなかった。さらに、魚膜移植で得られたヒト上皮欠損角膜のパラフィン切片でも上皮でのルミカン発現が観察され、マウス同様の機序が存在すると考えられた。しかし、角膜実質でのルミカン局在と創傷治癒の関係には優位な所見を得ることはできなかった。また、類縁蛋白質であるケラトカンは、角膜実質に検出されるものの、創傷治癒過程にあるマウス負膜上皮細胞で検出されなかった。創傷治癒過程にある上皮細胞のルミカン発現が上皮細胞系一般的に起こりうるのか、角膜上皮細胞に特異的な現象であるのかを、眼球でのもう一つの上皮系組織である水晶体上皮でも検討し、水晶体上皮細胞も創傷治癒過程でルミカンを発現することを確認できた。ルミカンの発現が、上皮細胞系の上皮・間葉系移行に関与するデータを我々が作成したルミカンノックアウトマウスで確認できた。ルミカン欠損マウスでは、上皮細胞が創傷治癒過程で間葉系細胞様に変化することが障害されていた。ルミカンと他の接着性蛋白質(ファイブロネクチン)などとの協調の可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Saika S, et al.: "Epithelial repair ; roles of extracellular matrix"Cornea. 21(Suppl). S23-S29 (2002)
• [文献書誌] Saika S, et al.: "TGFb2 in corneal morphogenesis during mouse embryonic development"Developmental Biology. 240. 419-432 (2002)
• [文献書誌] Saika S, et al.: "Latent TGFb binding protein and fibrillin-1 in human capsular opacification and in cultured lens epithelial cells"British Journal of Ophthalmology. 85. 1362-1366 (2001)
• [文献書誌] Saika S, et al.: "Comparison in rabbits and numans between Scheimpflug images of posterior capsular opacification and histologic findings"Journal of Cataract & Refractive Surgery. 27. 1088-1092 (2001)
• [文献書誌] Saika S, et al.: "Lens epithelial cells regenerate a capsule-like structure during postoperative healing in rabbits"Journal of Cataract & Refractive Surgery. 27. 1076-1078 (2001)
• [文献書誌] Saika S, et al.: "Smad translocation and growth suppression in lens epithelial dells by endogenous TGFb2 during wound repair"Experimental Eye Research. 72. 679-686 (2001)