インフォームドコンセントを得た後に、70名の正常眼圧緑内障患者から血液を採取し、ミオシリン遺伝子変異について解析した。200塩基対程度の大きさになるようにプライマーを設計しSSCP法によりスクリーニングを行い、変異が疑われたサンプルについて、直接シークエンシング法にて遺伝子配列を決定した。その結果、アミノ酸置換を呈する1つの変異と8つの多型を認めた。Asp208Glu変異家系では、ミオシリン変異と表現型が家族内で一致しており、正常眼圧緑内障を呈していた。この変異は、健常者60名には認められなかった。 ブタ摘出眼球を材料とし、我々が作製したポリクロナール抗体を用いて、視神経周囲組織におけるミオシリン発現を免疫組織学的に検討した。光顕像において、抗ミオシリン抗体の染色像が、抗Glial Fibrillary Acidic Protein抗体を用いた場合と一致したことから、ミオシリンが視神経乳頭部におけるastrocyteに局在していることが確認された。さらに免疫電顕像におけるastrocyte内での陽性反応部位は、核周囲・粗面小胞体・ミトコンドリアおよびグリア線維であり、特にastrocyte細胞突起の内境界膜終息部やastrocyte同士の間や神経・血管との接着部位に多く発現していることが判明した。 またブタ眼球から、視神経乳頭周囲のグリア(astrocyte)細胞を摘出し、培養した。このグリア細胞は、少なくとも数世代は継代培養できることを確認した。現在、培養グリア細胞内での微細構造におけるミオシリン局在を光学顕微鏡および免疫電顕法により観察中である。
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