前房内に存在する神経ペプチドの一種であるcalcitonin gene-related peptide(CGRP)で刺激後の腹腔マクロファージを用いたマウス実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の抑制機構の解明を行った。C57BL/6マウスから得られた腹腔マクロファージ(PEC)をCGRPとヒトIRBPの1-20残基から成る部分ペプチド(IRBP_<1-20>)、またはウシ血清アルブミン(BSA)とともに培養した。そしてIRBP_<1-20>でC57BL/6マウスに強化免疫するのと同時に培養マクロファージを静脈内投与した。強化免疫19日後にマウスの耳介にIRBP_<1-20>を注入して遅延型過敏反応(DH)を測定し、強化免疫21日後にEAUの発症の程度を病理学的に検討した。また、IRBP_<1-20>とCGRPと共に陪養したPECをIRBP_<1-20>強化免疫マウスに注入時、抗IL-10抗体を投与する群、IL-10ノックアウトマウス由来のPECを用いる群を作成し、同様の検討を行った。IRBP_<1-20>とCGRP(100ng/ml)と共に培養したPECをIRBP_<1-20>強化免疫マウスに注入した群ではCGRPを用いない対照群と比較して有意にDHが抑制され、EAUの発症率も80%から30%に減少した。BSAとCGRPで共培養したPECをIRBP_<1-20>強化免疫マウスに注入した群では、EAU発症率が70%と対照群と有為差を認めなかった。そして抗IL-10抗体投与群ではDH抑制、EAU抑制ともに起こらず、IL-10ノックアウトマウス由来のPECを用いた群でも同様にEAU抑制は起こらなかった。抗原特異的にCGRPで共培養したPECはマウスEAUを軽減させる作用を持ち、このメカニズムとしてマクロファージ由来のIL-10を介した抑制機構が推測された。 当研究は、失明原因の一因であるヒト難治性ぶどう膜網膜炎の戦略的な治療に多大な貢献をなすと考えている。
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