ヒト未熟児網膜症の眼内における血管新生促進因子の発現 重症未熟児網膜症(Stage 5)の患者に対して我々はこれまでに硝子体手術を施行してきた。その手術の際に眼内に存在している新生血管を含む線維増殖膜を摘出し検体とした。増殖細織から新鮮凍結切片とパラフィン切片を作成し、免疫細織染色を行った。 今回、眼内加管新生の最も代表的な血管新生促進因子とされ、血管新生の活動性の指標と考えられている血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor ; VEGF)の発現を検索した。免疫組織染色の結果、未熟児網膜症のstage5の患者46例中29例(63%)の増殖膜にVEGFの陽性所見が認められた。また、血管内皮細胞に特異的に陽性となるFactorVIIIによる免疫組織染色を連続切片を用いておこなったところ、VEGFと同様の部位に陽性所見が認められた。従って、VEGFが増殖膜中の血管内皮細胞で発現していることが証明された。また、手術を行った時期の点からVEGFの陽性率を検討したところ、VEGF陽性の症例は生後9ヶ月以内に手術を行った症例では26/34(76.5%)と多く、生後10ケ月以降に手術を行った症例では3/12(25%)と発現率は低く両者の間に有意差を認めた(P<0.05)。未熟児網膜症の眼内において生後10ケ月以降では、眼内の血管新生の活動性が低下すると考えられた。
|