【方法】Wister系ラット50匹を用いた。Epigastric vesselsを茎とした下腹部皮弁(2.5x4.5cm)を挙上した後、マイクロクリップにてEpigastric vesselsを8時間血行を遮断した8時間虚血群と、皮弁挙上のみのSham群をそれぞれ25匹作成した。再還流後8時間、24時間、48時間、4日目、7日に各群5匹ずつ皮弁を採取し、組織学的評価および、1視野あたりの真皮下脂肪細胞と表皮細胞の細胞数をカウントした。さらにCytochrome CとCaspase-3について免疫染色法を行い、発現の局在と経時的変化を追跡した。また、Caspase-3についてWestern blottingを行ない、皮弁全体での経時的発現量を検討した。 【結果】脂肪細胞数の有意差のある減少が8時間虚血群の7日目にのみ認められた。抗Cytochrome c抗体を用いた免疫組織染色像では、8時間虚血群の再還流後8時間目にのみ脂肪細胞に強い発現が見られた。24時間以降では発現は認めなかった。一方、抗Caspase-3抗体を用いたWestern blottingでは、対照群には一定した発現を認めるが、8時間遮断群では再還流後8時間・24時間で強い発現が見られ、以降発現は減弱していた。さらに抗Caspase-3抗体を用いた免疫組織染色で、再還流後8時間目のCaspase-3の発現部位を確認すると、脂肪細胞に強い発現が見られた。 以上の結果をまとめると、表皮細胞ではCytochrome cもCaspase-3も発現せず、細胞死も生じなかったが、脂肪細胞はCytochrome cとそれに引き続くCaspase-3の発現をみとめ、7日目に細胞死を生じていた。脂肪細胞の7日目の細胞死にはCaspase-3系apoptotic cascadeが関与している可能性が示'唆された。 以上は、第19回日本形成外科学会基礎学術集会(仙台市)にて発表した。
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