口腔領域腫瘍における基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンの機能を解明するために、これまでに樹立した各種口腔腫瘍由来培養細胞株からRNAを抽出し、パールカンの各ドメイン構造に特異的な約30種類のプライマーで逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)をもちいて遺伝子発現型を解析し、スプライシング亞型を同定した。 その結果、第一および第二ドメイン間に通常のパールカンには認められない、新たに挿入(splice-in)される新規エクソン(exon 6'と名づけた)をみいだした。exon 6'は51塩基の長さを持ち、推定アミノ酸配列は五つのプロリンが連続する特異な配列であった。また、培養細胞のゲノム塩基配列を解析したところ、exon 6'はパールカンの6番目イントロン下流に連続して存在し、イントロン・エクソン境界部位に保存配列が存在することが判明した。つぎに、exon 6'を有する亞型の発現を各種細胞間で比較すると、上皮系より間葉系細胞に3〜4倍高発現していた。 さらに、第四ドメインにおいて、exon 73 (205 bp)が欠失(splice-out)されている亞型を同定した。この欠失によって下流部位(exon 75)に停止コドンが導入される。この亞型はdyssegmental dysplasia等の疾患で報告されているものと同一で、上皮系培養細胞にやや高発現の傾向をしめした。 現在、上記スプライシング部位の合成ペプチドでモノクローナル及び、ポリクロナル抗体を作製中であるが、来年度は抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチド導入法による同部位の機能検索を実施して、口腔腫瘍病変の発育進展におけるパールカン遺伝子表現亞型の役割を明らかにしたい。
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