前年度において、基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンのスプライシング亜型を各種口腔腫瘍由来培養細胞株から二つのスプライシング亜型を見い出し、培養細胞株間におけるその発現傾向を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびRNase protection assayにて明らかにした。 本年度は、さらにマウスにおいて上記exon 6'に相当する配列をもつスプライシング亜型を同定した。マウス全身臓器を用いたRT-PCRによる検索では、全ての臓器に発現が認められたが、心臓、胃、小腸、大腸、筋肉、子宮、舌のような筋組織が発達した臓器に高発現し、これら臓器では週齢とともに発現の亢進が認められた。また、これらのスプライシング部位の合成ペプチドもしくは大腸菌組み換え蛋白質でウサギポリクローナル抗体を作製し、マウス各種臓器のパラフィン切片、凍結切片にて免疫染色を行ったところ、第一のスプライシング亜型では、主に基底膜に認められる野生型とは異なり毛細血管に特異的な染色パタンが認められた。 以上の結果から、ヒトでもexon6'をもつパールカン・スプライシング亜型が同部位に局在するものと考えられ、このスプライシング亜型が野生型と同様に様々な組織に存在し、毛細血管において野生型パールカンとは異なる生理的機能を果たしていることが示唆された。
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