X連鎖性低リン血性くる病(XLH)を始めとし、常染色体優性低リン血症性くる病(ADHR)、腫瘍性骨軟化症(T10)は低リン血症のみならず、骨芽細胞の本質的機能欠損を起因とする可能性が高い。最近発見されたPHEXまたはFGF23の遺伝子異常はいずれも低リン血症の主要因であると考えられるが、その本質的機能欠損は、最終的にはこれらの分子に係わらず骨芽細胞自身の無機リン酸(Pi)輸送能に集約されると予想される。しかし骨芽細胞のPi輸送が石灰化に寄与する直接の証拠はなく、この機構を明らかにすることはXLHなどの病態解明のみならず骨形成一般を理解する上で不可欠である。我々は選択的Na依存性Pi(NaPi)輸送阻害剤foscarnetを新生仔ラット頭蓋に直接投与して骨動態を解析した。予想通り、foscarnetは低リン血症を合併することなく石灰化を抑制した。加えて縫合部から新生骨にかけては骨芽紳胞の形態異常を認めた。胎仔ラット頭蓋冠(RC)由来の骨芽細胞の単一細胞コロニーアッセイでPit1(III型NaPi輸送担体)の発現が検出された。Pit2(同III型)、脳型のNaPi輸送担体の発現も確認されたが、その分布、発現量はPit1に及ばなかった。RC細胞モデルにけるPit1の過剰発現は石灰化を促進し、逆にアンチセンスオリゴDNAによって石灰化は抑制された。以上の結果より、Pit1は骨芽細胞のNaPi輸送担体としてPiを動員し、骨基質石灰化を誘導することが明らかとなった。この結果から、XLHなどの骨芽細胞の本質的機能欠損とPit1の関連に注目したい。
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