研究概要 |
塩化コバルト(II)六水和物による培養細胞のアポトーシス誘導に塩化亜鉛が与える影響を細胞および分子レベルで検討した。 1.ヒト唾液腺癌細胞(HSG細胞)を0.5mMの塩化コバルトで処理し、さらに様々な濃度の塩化亜鉛を加え、48時間培養した時のアポトーシス誘導の変化を検討した。位相差顕微鏡による形態観察では、塩化亜鉛の濃度に依存して球形の細胞やシャーレから浮遊する細胞が減少した。WST-1 Assayによる細胞活性の測定の結果、塩化亜鉛の濃度依存的に細胞活性は増加し、50,100μM処理群では細胞活性は完全に回復した。さらにアガロースゲル電気泳動法によりDNAラダー形成能を解析したところ、20μM塩化亜鉛処理細胞では明瞭なDNAラダーが観察されたが、70,100μM処理細胞ではDNAラダーは観察されなかった。 2.塩化コバルトと様々な濃度の塩化亜鉛で処理し48時間培養したHSG細胞より蛋白を抽出し、ヒトbcl-2抗体(Santa Cruz)を用いて、ウェスタンブロッティング法を行った結果、50,100μM塩化亜鉛処理細胞においてbcl-2蛋白が検出された。一方、bax蛋白については、塩化亜鉛の濃度による発現の違いは認められなかった。さらに1mM塩化コバルトと様々な濃度の塩化亜鉛で処理し8時間培養したHSG細胞よりトータルRNAを抽出し、RT-PCR法を行った結果、100μM処理細胞においてbcl-2mRNAの発現が回復した。 以上の結果より、塩化亜鉛は濃度依存的に塩化コバルトによるアポトーシスを抑制した。この塩化コバルトによるアポトーシス誘導と塩化亜鉛による回避はbcl-2を介している可能性が高いことが示唆された。
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