研究概要 |
【目的】閉経後のエストロゲン欠乏による骨粗鬆症は,骨吸収の急激な亢進による平衡状態の崩れを生じ,高齢化社会における大きな問題として,医学のみならず歯学領域においても臨床上重要とされている.よって,その発症メカニズムの分子レベルでの解明と有効な治療法の開発は急務である.今回申請した実験を行うにあたり,これまでにEnamel matrix derivative (EMD)やビスホスフォネート(BP),RANKLなどによる骨吸収と破骨細胞の分化・機能の制御に関する研究を行い,準備を行ってきた.これらの研究結果をもとに,閉経後骨粗鬆症におけるエストロゲン欠乏による骨吸収の亢進を抑制し,骨量の低下を効果的に減少させるものと推測される,破骨細胞形成抑制因子として最近同定された,Osteoprotegerin (OPG)/osteoclastogenesis inhibitory factor (OCIF)を用い,破骨細胞における骨吸収の抑制作用についてin vivoでの実験を行った. 【方法】本実験では,生後8週齢のマウスに卵巣摘出を施し,閉経後骨粗鬆症モデルマウスを作製し,術後7日間,OPG/OCIFを0.3mg/kg/day連日投与し,大腿骨における破骨細胞の分化・誘導と構造の変化,骨構造の変化の組織学的・細胞化学的な解析を行った. 【結果】実験の結果から(1)OVX群において急激に減少した大腿骨骨幹端における海綿骨梁は、OVX/OPG群では有為に増加し、正常なマウスに近い値まで回復していた.(2)大腿骨骨幹端付近に認められたOVX/OPG群の破骨細胞数は、OVX群に比べ減少傾向にあった.(3)OVX/OPG群で観察された多くの破骨細胞において、波状縁の消失が認められたが、ネクローシスやアポトーシスのような像は観察されなかった.(4)OVX/OPG群で観察された破骨細胞におけるH^+-ATPaseの局在は減少傾向にあった. 【結論】よって,破骨細胞の分化と骨吸収活性の減少によるOVX群の急激な骨梁の減少は,OPG/OCIFの投与によって,有為に抑制されることが示唆された. 平成14年度はOPGの投与量と投与期間を増やして実験を行う予定である.
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