研究概要 |
HT-29細胞を10ng/ml TNF-α及び様々な濃度のall-trans retinoic acid(ATRA)で48時間刺激し,培養上清および細胞を回収した。培養上清は約20倍に濃縮し,抗SC抗体およびHRP標識抗SC抗体を用いたELISA法でSC量を測定した。また,細胞からtotal RNAを抽出し,northern blot法を用いてpIgR mRNA発現量を検出した。その結果,TNF-αとATRAの同時刺激で,培養上清中のSC量がTNF-α単独刺激よりも顕著に増加した。SC量の増加はATRAが1μMの時に最大であった。RAR特異的agonistである4-[E-2-(5 6, 7, 8-tetrahydro-5, 5, 8, 8-tetramethyl-2-naphthalenyl)-1-propenyl] benzoic acid(TTNPB)を加えても同様に培養上清中のSC量の増加が認められることから,ATRAの直接的な作用によるものであることが示唆される。また,RAR isoformのagonistである,4-[(5, 6, 7, 8-Tetrahydro-5, 5, 8, 8-tetramethyl-2-naphthalenyl)carboxamido]-benzoic acid (AM-580, RARα specific)ではSC量の顕著な増加が見られたがN-(4-hydroxyphenyl)retinamide(4-HPR, RARγ>RARβ)ではSC量の増加に変化が認められなかった。従ってATRAによるSC量の増加はRARαを介したものであることが示唆される。さらに,ATRAによるSC量の増加はnorthern blot法の結果より転写レベルによって制御されていた。以上の結果から,HT-29細胞においてATRAはRARαを介し,TNF-αによるSC産生量を転写レベルで増加させることが明らかとなった。
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