研究概要 |
実験に供試したPorphyromonas gingivalisは、鶴見大学歯学部附属病院に来院した新患患者のうち歯周炎と診断され、過去3ヶ月以内に抗生物質の投与されていない患者で、実験の趣旨を説明の上、同意の得られた患者から採取した。現在、約130株のP.gingivalisが得られ、PCRにより線毛遺伝子のTypeを検索したところ、Type IIが75%、Type IVが20%、Type IIIが3%、untypeableが2%であり、Type IとType Vは得られなかったため、Type Iについては標準株であるATCC33277株を実験に用いた。これらの菌株の線毛のType別に性状を比較したところ、他菌種との共凝集については、どのTypeも大きな差異は認められなかった。また菌体表層の疎水性については、Type Iおよびuntypeable株が高く、他のTypeはいずれも中等度であった。RIを用いてヒト歯肉および歯根膜繊維芽細胞への付着性について検討した結果、Type II以外の菌株については高い付着性を示したがType II株群は低い値しか示さなかった。Type II株群はその中でも、細胞への付着性が比較的高い群と低い群があることが分かった。これらの結果から、Type II株群は線毛が他のTypeの線毛遺伝子を持つP.gingivalisに比べ、少ないかあるいは線毛を発現していない可能性が示唆された。このType II線毛遺伝子を持つP.gingivalisは、重度の歯周炎部位から多く分離されることから、線毛とは別に強い病原因子を持っている可能性が考えられる。今後は動物を用いて感染実験を行い,その病原因子の特定について検討していく予定である。
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