研究概要 |
イノシトール1,4,5-三リン酸受容体(IP_3R)は細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>放出の重要な担い手であり、その細胞内分布は主に免疫組織化学法を用いて解析されてきた。本研究は、クラゲの発光タンパクであるGreen Fluorescent Protein(GFP)とラットIP_3Rとの融合タンパクを作製し、これを生きた細胞に発現させて、その細胞内局在を可視化することを試みた。 GFP cDNAをラットtype3 IP_3R(IP_3R3)cDNAのN末側に挿入し、GFP-IP_3R3融合タンパクを発現させるプラスミドベクターを作製した。このベクターをヒト唾液腺培養細胞およびヒト神経芽細胞腫に導入し、融合タンパクを発現させた。ウェスタンブロット解析により、この融合タンパクは完全長のGFPおよびIP_3R3タンパクを含んでいることがわかった。次に、共焦点レーザー顕微鏡でGFP蛍光を観察することによりその細胞内局在を調べた。この融合タンパクは、核を除く細胞質内に、網目状にほぼ均一な強さで発現していた。さらに、小胞体マーカーであるDiOC_6の蛍光パターンと比べたところ、これらの分布はよく似ていた。また、この融合タンパクが細胞内膜構造に発現することを確かめるために、サポニンで細胞膜に穴をあけ、細胞質の可溶性成分を除去した。その結果、網目状の蛍光はほとんど消えずに残っていた。対照的にGFPのみを発現させた細胞では、核を含む細胞全体にGFPの蛍光が観察され、サポニン処理によりその蛍光はほとんど消失した。 これらの結果から、GFP-IP_3R3融合タンパクが細胞内膜上に発現していることが示された。このことは、GFP-IP_3R3融合タンパクが機能的なIP_3Rとして働く可能性を示唆しており、IP_3Rの局在とシグナル応答との関係をリアルタイムで解明するのに、有利な道具になると期待される。
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