象牙芽細胞の容量性Ca^<2+>流入チャネルに着目し、象牙質形成に関わる神経制御機構を検索した。 1.象牙芽細胞における容量性Ca^<2+>流入の電気生理学的・薬理学的特性を細胞内Ca^<2+>濃度計測およびパッチクランプ法を用いて解析した。 (1)象牙芽細胞に以下の特性を示す容量性Ca^<2+>流入チャネルが発現していた。 a.細胞内Ca^<2+>ストアの枯渇で活性化する。 b.過分極電位における内向き整流特性、陽性反転電位、電位非依存性活性化、Ca^<2+>>Ba^<2+>【approximately equal】Sr^<2+>>>Mn^<2+>の相対的コンダクタンスを示す。 c.細胞外La^<3+>で濃度依存的に抑制される(IC_<50>=26μM)。 d.Ca^<2+>選択性(K_D=1.29mM;Hill coefficient=1.4)を示す。 e.膜透過性IP_3受容体抑制薬2-aminoethoxydiphenyl borateで抑制される。 (2)象牙芽細胞に、muscarinic、bradykinin、P2Y受容体が発現していた。 (3)象牙芽細胞に、IP_3感受性Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>放出(IP_3誘発性Ca^<2+>放出)機構が発現していた。 以上のことから、歯髄内で放出される神経性・化学性因子が象牙芽細胞のフォスフォリパーゼC関連受容体を活性化し、IP_3誘発性Ca^<2+>放出を引き起こす結果、ストアが枯渇し、容量性Ca^<2+>流入チャネル(store-operated Ca^<2+> channels)が活性化する事が示された。容量性Ca^<2+>流入は、象牙芽細胞の細胞内Ca^<2+>シグナルとして象牙芽細胞機能を調節する結果、象牙質形成を駆動していると考えられる。 本成果は、International Conference on Dentin/Pulp Complex 2001においてYoung Investigator Awardを受賞した。
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