研究概要 |
DNA修復に関与することが示唆されているポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP-1)のノックアウトマウスを用いて、DNA付加体形成を介したDNA損傷による口腔がんの発がん機構におけるPARP-1の関与を明らかにする。研究代表者らが作製したPARP-1欠損マウスを用いて、4-nitroquinoline 1-oxide(4-NQO)投与による口腔発がんの感受性を調べる。最近、PARP-1欠損マウスにおいて、種々の発がん性化学物質に対する発がん感受性が亢進することを報告した。DNA付加体を形成することにより、DNA損傷を誘発するN-nitrosobis(2-hydroxypropyl)amine(BHP)による肝臓及び肺の発がん感受性が、PARP-1欠損により亢進すること(Carcinogenesis,2001)、同様にDNA付加体を形成するazoxymethane(AOM)に対する大腸の発がん感受性が亢進すること(投稿準備中)を明らかにしてきた。本研究において、口腔を発がんの主なターゲットとする4-NQOを飲水に含有して投与し、口腔の発がん感受性とPARP-1を介したDNA修復系の関連について調べる。野生型マウス、ヘテロ及びホモPARP-1欠損マウス各群30匹ずつを用い、4-NQOを0.001%の濃度で飲料水に添加する群と添加しない群各15匹の2群に分けて、50週間投与する予定である。現在、20週を経過し、経時的に口腔内マクロ所見を記録している。50週後に全解剖を行い、4-NQO投与、非投与による発がんの頻度とPARPgenotypeとの相関について統計学的に検討を行う。腫瘍の発生部位、病理組織型、深達度、悪性度を総合的に評価し、PARP-1欠損の影響を総括する。口腔領域の発がん過程において、DNA付加体を形成してDNAを障害する機構の関与の有無についても明らかにする。
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