研究課題
本研究の目的は経脳硬膜超音波ドプラー法を用いて、顎運動の大脳皮質性の制御機構を解明することである。実験に使用したサルは人と同じく雑食性で咀嚼運動のパターンもよく似ていることが知られている。平成13、14年は経脳硬膜超音波ドプラー法のコントロール実験をかねて上肢の運動課題実行中のサルにおける大脳皮質運動関連領域の血流変化を記録、解析した。その結果、上肢領域においては、(1)一次運動野では、片手課題で運動開始に応答するような大幅な血流増加が反対側性にみとめられた、また、両手課題でも左右の半球で運動開始に関連した大幅な血流増加がみとめられた。(2)補足運動野では、片手課題、両手課題のいずれにおいても、手がかり刺激と運動開始に応答するような血流増加が両側性にみとめられた。(3)運動前野背側部では、片手課題および両手課題で遅延期間に対応した血流増加が反対側性にみとめられた。(4)運動前野腹側部では、片手課題および両手課題で手がかり刺激と運動開始に関連した血流増加が反対側性にみとめられた。以上の所見はこれまでの電気生理学的データとよく一致しており、経脳硬膜超音波ドプラー法による脳機能イメージングは優れた空間分解能、時間分解能を持つことが示唆された。さらに、運動課題の報酬として与えられるジュースの摂取時を嚥下を伴う顎口腔の運動として大脳皮質の血流変化を記録した。大きな活動の見られた部位は、一次運動野口腔領域、皮質咀嚼野主部、下弓状溝腹側壁、皮質咀嚼野の腹側であった。また、前頭弁蓋の下端にある嚥下関連領域が遅れて活動を開始し、一次体性感覚野、二次体性感覚野がそれに続いた。以上のことより、通常の顎運動における活動部位を同定することに成功した。今後は薬物を用いて各顎運動関連領域を局所的、一時的に機能を停止させ、他の部位での活動の変化を行動学的な解析と合わせて行う予定である。
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