【目的】ラットを使用した動物実験にて、骨欠損部に填入されたキチン-キトサンの生体内における吸収過程をリゾチームをマーカーとして検討することにある。 【材料および方法】6週令のWistar系雄性ラットおよび脱アセチル化度の異なる5種の綿状キチン-キトサン(0、35、50、70、100%)を用い、下顎骨下縁とオトガイ孔の間の骨表面から直径約1mm、深さ約1mmの円筒形骨窩洞を形成した後、窩洞内に填入した。術後1、2、3、4週間経過時に各々のラットを潅流固定した後、キチン-キトサンが填入されている部位を周囲の骨と共に注意深く摘出し低粘性アクリルレジンであるLR-Goldにて包埋した。厚さ約2μmの準超薄切片を作製し、トルイジンブルー染色、およびウサギ抗ラットリゾチーム抗体を用いてImmunogold-silver stainingを行い光学顕微鏡にて観察した。 【結果】術後1週間経過時ではすべての脱アセチ化度のキチン-キトサンと関連してリゾチームが認められ、特に0%群に著明であった。また炎症性細胞浸渇は軽微であった。 術後2週間以降はリゾチームの発現が経時的に減少しており、術後4週間経過時では脱アセチル化度100%群ではほとんど認められなかった。 術後すべての経過期間において、脱アセチル化度が高くなるにしたがいリゾチームの発現が減少していた。 【結論】キチン-キトサンは生体内酵素であるリゾチームと反応することによって、経時的に生理的吸収されることが示唆された。また、リゾチームの免疫染色の程度とキトサンの脱アセチル化度との間には関連性が認められた。
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