研究概要 |
平成14年度報告 今年度は象牙芽細胞の培養系を確立するために、ウシ歯胚より細胞採取を試みた。ウシ歯胚は成牛の永久歯胚を採取し、象牙芽細胞の発生源である歯乳頭を切り出し、細菌性コラゲナーゼによる酵素消化で歯乳頭細胞の分離培養を行った。得られた歯乳頭細胞の遺伝子発現をRT-PCR法で調べた結果、これらの細胞はdentin siloprotein(DSP), bone siloprotein(BSP), osteocalsin(OC)を発現していない、未分化な細胞集団である事が確認された。次に歯乳頭細胞をdexametazon、β-glycerophosphate、ascorbic acidを添加した分化誘導培地を用いて、象牙芽細胞への分化誘導を試みたところ、期待に反して歯乳頭細胞は反応せず、未分化状態を維持していることが考えられた。そこで歯乳頭細胞を免疫不全症マウスの皮下へ移植実験を行い、生体内にて分化誘導を試みた。その結果、移植後一ヶ月で歯乳頭細胞は骨様硬組織の形成能力を有する事が確認されたが、象牙質様硬組織の形成は観察されなかった。これらの結果より、歯乳頭細胞に存在する未分化細胞集団は骨様石灰化物の産生可能な骨芽細胞前駆体の特性も有しており、単独で移植すると骨芽細胞に分化すること考えられた。従って、歯乳頭細胞から象牙芽細胞への分化のためには、発生期歯胚で見られる、上皮ー間葉系の相互作用を実験的に再現させることが重要であることが予測された。
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