研究概要 |
機能時,咬合面に負荷される咬合力は対合歯,隣在歯を介して歯周組織をはじめとする顎口腔系に伝播され,歪みという形でそのエネルギーは置換される.従って,力が伝播される界面,すなわち咬合接触,隣接歯間関係が,顎口腔系に調和していない場合には,そのエネルギーは不適当な方向へ伝播され顎口腔系に障害をもたらす可能性がある.機能時の咬合力はその当該歯ばかりではなく,対合歯や隣在歯およびその歯周組織などに伝播し,主に歪みに変わってそのエネルギーが置換される.本研究は,上顎第一大臼歯に実験的に咬合接触を付与しその時の隣在歯の歯周組織の歪みを測定することにより,1歯単位ではなく歯列全体での調和した咬合接触部位を探求しようとするのが目的である.平成14年度はまず上顎第一大臼歯の咬合面を8部位,すなわち,4咬頭の全てを近心および遠心斜面に区分し,その時の第一大臼歯の歯の変位を測定した.その結果,頬側咬頭に咬合接触を付与した場合は被験歯は近心頬側歯根方向へ変位した.一方,舌側咬頭に咬合接触を付与した場合はすべての被験者で口蓋方向へ変位した.近遠心方向に関しては一定の方向性はなかったものの,いずれの被験者においても頬側咬頭に比べて,近心方向成分は少なかった.一方,歯冠歯根方向に関しては,概ね歯根方向へ変位したが中には歯根方向へ変位するのも見られ,かつ,いずれの被験者においても頬側咬頭に付与した場合時よりも歯根方向成分は少なかった.また,各咬頭の遠心斜面すにおける咬合接触が近心斜面における咬合接触に比べて歯をより近心に向かわせるという傾向は認められなかった.これらのことより咬合接触部位はその斜面とされにはその位置が歯の変位に影響を及ぼすことが明らかとなりつつある.次年度はこの結果を踏まえて,両隣在歯の歯の変位を測定し,検討を加える予定である.
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