1.陶材焼付用金合金/陶材焼付ではスズ、インジウム等の卑金属添加元素が、酸化物となって局所的に界面近傍に析出するものの、金合金と陶材は直接結合し得た。一方、チタン/陶材焼付界面ではチタンと陶材間に必ず酸化物層が存在した。従来の「化学結合を得るため、金属と陶材間には必ず酸化物層が存在する」という見方は一方的で不十分であることを原子レベルの透過型電子顕微鏡(TEM)観察で初めて明らかにした。 2.従来の考え方に基づけば、チタン/陶材焼付界面では酸化物層による化学的結合の寄与によって強固な結合界面が得られることになるが、実は反応生成物によってチタン側に欠乏層が生じ、界面強度が低下していることを明らかにした。これも従来の単純な見方では予測できなかったことであり、TEM観察によって実際の微細組織を明らかにすることが非常に大切であることを示している。 3.チタン/陶材焼付界面では界面の深さ方向変化に伴い、チタン酸化物のカチオン価数が変化することを局所EDX分析による組成分析及び結晶構造解析より明らかにした。それに対応して電子エネルギー損失スペクトル(EELS)の吸収端微細構造(ELNES)に変化が生じていることをTEM-EELS法で明らかにした。 4.チタン/陶材焼付界面では各種酸化物が観察されたが、その一つにルチル酸化物があった。その多形のアナターゼ酸化物は観察されなかった。そこで陽極酸化処理を行ったチタン表面の断面TEM観察を行った。陽極酸化処理によってアナターゼ酸化物の微結晶とアモルファスの2相組織となっていた。またチタンとアナターゼ間に格子整合性は認められず、微細組織はチタン/ルチル酸化物界面組織と大きく異なっていた。 5.プラズマクリーニング処理をTEM観察試料に施すことで、TEM観察中の試料汚染が大きく低減し、定量性の改善が図られた。
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