α-TCP顆粒とキトサンを混合した複合骨補填材が、骨芽細胞に対してどのような作用機序で骨再生を促進しているのかを検討した。骨補填材をラット大腿骨窩洞に埋入し、埋入後3、5、7および10日後に免疫組織学的および酵素組織化学的手法を用いて、骨芽細胞からの骨基質蛋白(オステオカルシンおよびオステオネクチン)の発現を調べ、破骨細胞の光顕観察を行った。コントロール群として、形成した窩洞に骨補填材を充填せずに筋層および上皮を縫合した群を用いた。結果を以下にまとめた。 補填材埋入3日後より、α-TCP顆粒周囲にフィブリン様組織および血餅組織が確認された。骨基質蛋白の発現は確認されず、破骨細胞は認められなかった。 埋入5日後は、補填材周囲に骨梁の形成が認められたが、α-TCP顆粒と骨とは接していなかった。また、骨基質蛋白の発現は認められず、α4-TCP顆粒周囲に破骨細胞も確認されなかった。 埋入7日後は、5日後と組織学的にはほぼ同様であったが、α-TCP顆粒周囲でオステオカルシンおよびオステオネクチンの発現が確認され、顆粒を取り囲む破骨細胞が確認された。 埋入10日後には、補填材周囲に骨梁の形成および一部のα-TCP顆粒との融合が認められた。7日後より顆粒周囲にオステオカルシンおよびオステオネクチンが強く発現し、また多くの破骨細胞が確認された。 これらの結果より顆粒表面で骨のリモデリング現象が起こり、顆粒周囲に存在する骨芽細胞の分化が促進されているものと考えられた。したがって本系複合骨補填材のα-TCP顆粒は、擬似的な骨代謝を誘導することにより新生梁状骨の成長を促進するものと考えられた。
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