研究概要 |
総義歯への軟性裏装材の使用が下顎位や顎筋活動に及ぼす影響を明らかにする目的で,5名の総義歯患者に2つの異なった厚さの軟性裏装材(Molloplast-B^【○!R】)を付与した義歯を装着し,強弱のタッピング運動を行わせ,タッピングポイント,収束性,咀嚼筋活動,および衝撃加速度を分析した結果,以下の結論を得た. 1.タッピングポイントは有意に前方に偏位し,1.4mmより2.8mmにおいてより偏位が大きかった.また経時的な変化は認めなかった. 2.タッピングポイントの前後的な収束性は,2.8mmが低く,また左右的にはLight tappingにおいて2.8mmが低かった. 3.タッピング運動時の積分電位は,2.8mmの側頭筋後部において,タッピングの強さに関係なく有意に減少し,また2.8mmの側頭筋後部の積分電位のCV値は増加した. 4.オトガイ部における衝撃加速度は,Strong tapping, Light tapppingとも軟性裏装義歯で有意に減少したが,厚さの違いには有意差を紹めなかった. 5.衝撃加速度と積分電位の関係は,2.8mmの咬筋においてStrong tappingでは正の,Ligh ttappingでは負め有意な相関を認めた. 以上より,軟性裏装材の付与ならびに厚さの違いが下顎位と咀嚼筋活動に影響を及ぼし,経時的な変化を認めないことから,長期的な使用による危険性が示唆された.
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