ストレス状態を把握するパラメータとして、唾液中の14kDaのタンパク質を分子生物学的に評価し、その生理活性を解明することを目的に、本年度は、唾液中14kDaのタンパク質と苦味結合タンパク質を同定するための実験を行った。 実験方法は、ヒト全唾液を採取し苦味物質(硫酸キニーネ)と混和したものをサンプルとしてアガロースゲルにより電気泳動を行った。硫酸キニーネがUV下で発光することを応用し、電気泳動後に、アガロースゲルの発光した部位を切り出し、その液体成分を抽出した。これを苦味結合タンパク質のサンプルとしてSDS-PAGEを行い、ウエスタンブロッティングした。タンパク質が転写されたPVDF膜をCBB染色後、染色部位を切り出し、プロテインシークエンスを行った。一方、14kDaのタンパク質のシークエンスを行うため全唾液をサンプルとし、1次元目にnative-PAGE、2次元目にSDS-PAGEを行った。ウエスタンブロッティング後、CBB染色し、数個の、高次構造の異なる14kDaの当該部位を切り出し、プロテインシークエンスを行った。 その結果、上記の数個の14kDaのタンパク質が、Cystatinファミリー2の特異なアミノ酸配列を有していた。現在、苦味結合タンパク質のプロテインシークエンスを行う準備中である。今後は14kDaのタンパク質のより多くの塩基配列を決定し、それぞれ、Cystatinの何型と一致するのか検討する。また、苦味結合タンパク質のプロテインシークエンスができ次第、14kDaのタンパク質との照合や、苦味結合能力について検討する。
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