研究概要 |
一般にセラミックス基複合材料は,高比強度,高靱性など既存の歯科用セラミックスでは実現困難な要求性能を満足し得る材料と考えられている.そこで本研究では,繊維強化セラミックス(Fiber reinforced ceramics : FRC)を作製した.さらに,曲げ試験を行い,繊維補強の効果を検討した. 作製したFRCの強化材には,Si-Ti-C-O繊維,マトリックスにはAl_2O_3を用いた.ドクターブレード装置により粘度調整したスラリーを,平行に並べられた繊維に含浸させた後にキャリアフィルム上に流延して厚さ0.5mmのプリプレグを作製した.成形したプリプレグを6枚積層した後に常圧成形し,一方向繊維複合材を成形した.また比較対象として,繊維強化されていないAl_2O_3単体の試供体も同様に作製した.作製したFRCの機械的性質を調べるため,三点曲げ試験および有限要素法を用いた三点曲げ損傷進展解析を行った. 曲げ試験の結果,FRCはAl_2O_3単体と比べて,曲げ弾性率は1.2倍(=100.3GPa/81.9GPa),曲げ強度は2.3倍(=362.8MPa/160.2MPa),さらに応力-たわみ線図の面積から算出した破壊エネルギーは8.9倍増加した.また三点曲げ損傷進展解析の結果から,始めは最外層のマトリックスが破壊し,次に第二層目のマトリックスが破壊し,その後,繊維が破断して最終破壊に達した.これらのことから,Al_2O_3単体は脆性的な破壊であったが,FRCは負荷中期よりその挙動は非線形的性質を示したことから,FRCにかかる負荷を繊維が担うことにより強度が向上したものと考えられる.以上のことから,作製したFRCはAl_2O_3単体と比べて,優れた曲げ特性を示し,またその作製方法はプリプレグを積層するものであり,新しい歯科用セラミックスとしての応用が期待される.
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