研究概要 |
顎関節内障患者に高い頻度で認められる開口制限をはじめとする種々の運動制限は,患者の日常生活への影響が大きく,できるかぎり早期の解除あるいは緩解が望まれる.運動制限の原因としては,まず前方に転位した関節円板による下顎頭運動の直接的な阻害が考えられる.このため,関節円板の動態と顎運動との関連が追究された.すなわち.関節腔造影検査やMR画像検査により,関節円板の転位の程度や関節円板の変形の様子を明らかにしたのち,それらの所見と顎運動との関連が検討された.その結果,運動制限の原因が転位した関節円板にあると思われる場合もあったが,他の因子が原因と思われる場合もあり,より詳細な検討の必要性が示された.そこで本研究では,顎運動の計測部位を切歯部のみならず顆頭点にも広げることによって,より明確に顎関節腔内病変と顎運動経路との関連性についての検討を行うこととし、平成13年度は、以下の方法で研究を実施した。 対象患者の抽出として当初、「鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した顎関節症患者のうち,MR画像検査により片側性の非復位性関節円板転位と診断し,上関節腔内の関節鏡視検査を施行する症例を対象とする.」としたが,症例数等の問題から,鶴見大学歯学部附属病院補綴科を受診した顎関節症患者のうち,MR画像検査および顎運動検査を施行した症例を対象とした。その結果、35症例(男性10名、女性25名)が対象として得られた。このうち、関節鏡視検査も併せて施行した症例は女性のみ4例であった。現段階では、顎運動所見とMR画像所見および関節鏡視所見との間に明らかな関連性は認められないが、来年度とあわせ、可及的に症例を増やして顎関節腔内の病変と顎運動の関連を明らかにし、顎関節内障の診断および治療、さらには原因追究の一助とする所存である。
|