本年度は鋳造床にチタンを使用し、クラスプを歯科用合金にて歯科補綴物を作製した場合を想定し、実験を行った。チタンに歯科用合金をレーザー溶接した場合の接合状態を以下の試験より明らかにした。 材料はチタンと、金合金タイプ4、金銀パラジウム合金、白金加金、コバルトクロム合金を使用した。試験片の形状は15×5×1(mm)とし、チタンは圧延加工により、その他はすべて鋳造により作製した。試験片作製後、ガラスビーズによるサンドブラスト処理を行い、専用治具に突き合わせ継ぎ手にて固定し、レーザー溶接機(TLL7000・TANAKA)を用いて、アルゴンガス雰囲気中、試験片の全面に溶接した。 接合後、オートグラフ(AG-5000D、島津)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/minの条件で曲げ試験を行なった。同様に接合した試験片はビッカース硬さ試験と、1%乳酸水溶液中50cc中30日間浸漬後に溶出試験を行った。 実験の結果、チタンと歯科用合金のレーザー溶接後の曲げ強さは、チタン同士および歯科用合金同士の溶接後の曲げ強さよりも低い値となった。チタン-金合金の曲げ強さは339±50.8MPaであった。チタン-金銀パラジウム合金は423±70.3MPaであった。チタン-白金加金は493±65.6MPaであった。チタン-コバルトクロム合金は接合する事ができず、測定不能であった。チタンおよび各金属間を比較すると、チタン-金合金とチタン-金銀パラジウム合金の間に有意差(P<0.05)が、またチタン-金合金とチタン-白金加金の間に有意差(P<0.01)が認められた。硬さ試験の結果、レーザー溶接後の溶接部のビッカース硬さは母材部の硬さより大きい値となった。溶出試験の結果、異種金属溶接した場合、チタンの同種金属溶接と比較して、Tiの溶出量は大きい値となった。
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