当科を受診した唇裂・唇顎口蓋裂患者の家系調査を詳細に行い、少なくとも親子で本疾患の発症を認めた9家系60名を対象とした。本研究の施行には、新潟大学歯学部倫理委員会の審査と承認を受け、対象家系には研究の主旨を十分に説明して同意を得た上で末梢血採血を行った。ゲノムDNAを抽出後、19q13.2領域に存在するD19S178、BCL3、007/008、AC1/AC2の4つのマイクロサテライトマーカーを用いてPCR増幅し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行って銀染色法にて各アリルを検出し、遺伝子型を判定した。連鎖解析に入力が必要な各遺伝子座の多型情報については、健常日本人50名について同様に分析し、アリル数およびアリル頻度、ヘテロ接合度を求めた。次いで、各家系の情報、遺伝子型を入力し、常染色体優性遺伝モデルとしてLINKAGE packageのMLINKおよびFASTLINKにて二点連鎖解析を行い、浸透率0.8、0.6、0.3およびaffected-onlyモデルの場合の各組換え率におけるLODスコアを求めた。その結果、いずれもD19S178、007/008、AC1/AC2では連鎖が否定された。一方、BCL3では各浸透率において組換え率0%で最大値を示し、浸透率99.9%で最大LODスコア0.206となり、連鎖否定とも連鎖ありとも判定できず、原因遺伝子の存在は不確定であった。以上の結果を、「口唇・口蓋裂における19q13.2領域のマイクロサテライト多型を用いた連鎖解析について」として、第1回新潟ゲノム医学研究会(2001年6月、新潟市)において、「日本人口唇・口蓋裂患者におけるマイクロサテライト多型を用いた連鎖解析」として、平成13年度新潟歯学会第1回例会(2001年7月、新潟市)において口演発表を行った。
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