研究概要 |
光力学的癌治療時に用いられる光増感剤5-Aminolevulinic Acid(5-ALA)が腫瘍組織により早期に高濃度に集積させる投与法を確立する目的で、5-ALAおよび組織浸透性を高めると考えられている5-ALA Ester誘導体を扁平上皮癌に経皮的に塗布投与後,5-ALAより代謝、生成されるProtoporphyrm-IX(Pp-IXの腫瘍集積性について比較し,さらに脱毛剤と超音波照射の併用効果について検討を加えた。実験には扁平上皮癌(NRS-1)を皮下に移植したヌードマウスを用い、腫瘍頂部(直径7mm)に20%(1.2M/l)の5-ALAおよび5-ALA-Methyl、-Hexyl誘導体軟膏を塗布1時間後、各群で腫瘍を摘出。腫瘍組織はまず青紫色半導体レーザーを照射し、腫瘍塊全体の蛍光発光の部位について肉眼的に観察した。次いで凍結切片作成後腫瘍組織内Pp-IX光強度を蛍光顕微鏡にて対比観察し,分光光度計を用い分光化学的に定量計測し腫瘍組織内Pp-IX度を比較検討した。定量計測は凍結切片の蛍光強度と既知のPp-IX光濃度の検量線との対比により腫瘍組織内Pp-IX積量を算出した。軟膏塗布前の脱毛剤併用効果軟膏塗布10分後の冷却下超音波(1MHz)照射の併用効果についても各群で比較検討した。 その結果、増感剤塗布投与後,腫瘍組織内に均一なPp-IX蛍光発光が蛍光顕微鏡にて観察された。増感剤の種類の比較では5-ALA-Hexyl誘導体群が他剤に比べ最も強いPp-IX積を示した。軟膏塗布前の脱毛剤の併用効果は各群ともみられ,特に超音波未照射群において強い効果を示した。以上の結果より今回の検討においては,脱毛剤または超音波照射を併用した5-ALA-Hexyl誘導体軟膏を経皮投与する場合が最も早期に腫瘍組織に強いPp-IX積を示すものと考えられた。
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