ヒトp27^<Kip1>cDNAをpcDNA3.1(Invitrogen)にセンスならびにアンチセンス・オリエントに組み込んだ発現ベクターを作製し、口腔扁平上皮癌細胞株B88細胞に導入し、p27^<Kip1>遺伝子発現を制御した。センストランスフェクタントではp27^<Kip1>蛋白は過剰発現しており、MTT法により細胞増殖抑制が見られ、この際転移関連遺伝子Tiam1(Tumor invasion and metastasis 1)の発現減弱ならびに細胞接着因子E-カドヘリン、N-カドヘリン、α5インテグリン、γ-カテニンの発現増強が見られ、さらにBoyden chamberを用いたMigration assayにてMigration(細胞移動)能は減弱した。またアンチセンストランスフェクタントではp27^<Kip1>蛋白は発現抑制され、MTT法により細胞増殖促進が見られ、この際Tiam1の発現増強ならびにE-カドヘリン、N-カドヘリン、α5インテグリン、γ-カテニンの発現減弱が見られ、Migration能は増強した。また細胞周期解析では、センストランスフェクタントでは、G1期停止とアポトーシスを示唆するsub-G1 peakが認められた。さらにin vivoにおいてもp27^<Kip1>過剰発現はB88細胞の増殖を抑制し、一方p27^<Kip1>発現抑制はB88細胞の増殖を促進し、ヌードマウス背部皮下ヘアンチセンストランスフェクタントを移植した場合には、著明な腫瘍の増大と癌細胞の筋層への浸潤が見られた。以上より、p27^<Kip1>蛋白はB88細胞において細胞周期をG1期に停止させ、アポトーシスを誘導し増殖抑制作用を発現するとともに、転移関連遺伝子Tiam1や細胞接着因子を介して浸潤・転移抑制作用を発現している可能性が示唆された。
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