研究概要 |
われわれの教室において樹立したヒト口腔扁平上皮癌細胞(B88,BHY, HI, HN, HNt)、ヒト唾液腺癌細胞(HSG, HSG-AZA3, HSY)、ならびに腺扁平上皮癌細胞(TYS)について、p27^<Kip1>およびtuberinの発現をWestern blottingにて検索したところ、p27^<Kip1>は、B88, HSG, HSG-AZA3, HSYにおいて高発現しており、BHY, HI, HN, HNt, TYSにおいて低発現していた。Tuberinは、B88, HI, TYS, HSG, HSG-AZA3において発現が認められ、BHY, HN, HNt, HSYにおいて発現は認められなかった。すなわちB88, HSG, HSG-AZA3ではp27^<Kip1>およびtuberinが発現しており、BHY, HN, HNtはp27^<Kip1>およびtuberinともに発現がほとんど見られなかった。なお一次抗体としてNovocastra社製 抗p27マウスモノクローナル抗体(クローン1B4)ならびにSanta Cruz社製 抗tuberinラビットポリクローナル抗体(N-19)を用いた。 財団法人癌研究会癌研究所・実験病理部長・樋野興夫先生より供与されたラットTSC2 cDNAをpcDNA3.1(Invitrogen)にセンスオリエントならびにアンチセンスオリエントに組み込んだ発現ベクターを作製し、B88へ導入し、ステイブルクローンを得た。またB88neo(空ベクター導入株)に比べて、B88-TSC2(TSC2過剰発現株)では、MTT法にて増殖抑制が認められ、さらに10GyのX線照射後3日目での生細胞数の減少が見られ、放射線感受性が増強したと考えられた。以上より、ヒト口腔癌細胞においてTSC2は増殖抑制作用を惹起し、放射線感受性を高める可能性が示唆された。
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