これまで検討してきたヒト口腔扁平上皮癌細胞株のうち、in vitro浸潤アッセイによりHGF/SF(10ng/ml)刺激で最も高い浸潤能の促進を示したSAS細胞は、HGF/SFの濃度依存的な運動能の促進が認められ、SAS細胞のHGF/SFによる浸潤能の促進は運動能の亢進と関連性が高いと考えられた。よって細胞内情報伝達系のうち、FAKとRhoの活性化の関連について説くことにより、シグナル伝達の大きな流れを明らかにすることを目的として、以下の解析を行った。 これまでの研究結果から、HGF/SF刺激の細胞内シグナルは、SAS細胞のHGF受容体(c-Met)を介しFAKを活性化し伝達され、HGF/SFによる運動能の亢進にRhoが関与し、細胞内シグナル伝達においてFAKの上流にRhoが存在し制御している可能性が示唆された。さらに、SAS細胞のRhoのmRNAはHGF/SF無刺激においても発現がみられ、常時Rhoが産生されている可能性が考えられた。 抗RhoA抗体を用いた免疫蛍光染色による共焦点レーザー顕微鏡解析により、SAS細胞のRhoの細胞内局在変化をみると、HGF/SF刺激により核周囲から細胞質側への局在変化が確認された。 そこで、SAS細胞の運動能が促進する際のRhoの関与と他の関連因子について、HGF/SF刺激したSAS細胞からトータルDNAを採取し、DNAチップによるスクリーニング解析を行っているが、明らかな細胞浸潤能の亢進に関連する因子の同定には至っていない。
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