今年度は、申請設備納入時期の関係で、元来平成14年度実施予定であった臨床的研究を先行させた。対象は、片側性顎関節クローズドロツクにて、顎関節洗浄療法の適応と診断された患者30名とした。治療目的に、われわれが新しく開発した、細径硬性関節鏡による顎関節鏡視システムを用いた顎関節有視下洗浄療法(以下、洗浄療法)を行い、その2〜11ヶ月(平均5.86ヶ月)後に2回目の洗浄療法を行った。1回目の洗浄療法後の経過良好な18名からは、本研究の意義を十分に説明したうえで、洗浄療法後の関節鏡視検査目的としての2回目の洗浄療法に対する同意を得た。残る12名については、同様の説明に加え、治療的側面も兼ねた2回目の洗浄療法について説明し同意を得た。2回の洗浄療法から得られた関節鏡視所見の差から、洗浄療法の臨床的効果と関節鏡視学的効果との関連性について検討した。また、本術式による医原性病変発現の可能性についても検討した。その結果、洗浄療法によって、必ずしも関節腔内病変の形態学的変化が生じるとは限らず、関節腔内病変の関節鏡視学的な改善あるいは悪化と臨床的効果の間に有意な関連性はなかった。一方、1回目の関節鏡視学的所見がほぼ正常と判定された2関節において、2回目の洗浄療法時に、関節結節被覆軟骨表面の線維化を認め、本術式による医原性病変の可能性が示唆された。現在、論文投稿の最終準備段階である。
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