研究概要 |
口腔扁平上皮癌培養細胞と唾液腺癌培養細胞から分離したシングルセルクローンにビンクリスチン処理し、多剤耐性遺伝子産物(P糖タンパク)をコードするmdr1 mRNAの発現をRT-PCR法で比較した。その結果、口腔扁平上皮癌培養細胞では、ビンクリスチン処理前のmdr1 mRNAの発現クローン数と発現量は低く、ビンクリスチン処理後では発現クローン数と発現量が増加したがわずかであった。一方、唾液腺癌培養細胞では、ビンクリスチン処理前からmdr1 mRNAの発現クローンが多数存在し、さらにビンクリスチン処理後には、発現クローン数と発現量の増加がみられた。そこで、これらのmdr1 mRNAの発現により、他の抗癌剤に対する感受性が低下しているか各種抗癌剤に対する50%増殖抑制濃度で検討した。その結果、mdr1 mRNAの発現クローンは、P糖蛋白の基質となるエトポシド、アドリアマイシンに対しても交差耐性を示すことが明らかとなった。 以上の結果より、1、両細胞株ともに,抗癌剤によってmdr1 mRNAが誘導されるクローンから構成されている。 2、抗癌剤未処理の唾液腺癌細胞クローンは、抗癌剤未処理の口腔扁平上皮癌細胞クローンにくらべ、mdr1 mRNAの発現頻度が高い。 3、口腔扁平上皮癌細胞と唾液腺癌細胞の両クローンは、ビンクリスチン処理によりmdr1 mRNAの発現量が増加する。 4、唾液腺癌細胞は、mdr1 mRNAの発現による、獲得耐性形質と自然耐性形質をともに示すことが明らかとなった.
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