研究概要 |
扁平上皮癌の腫瘍マーカーのうち最も代表的なもののひとつであるSCC抗原は,cDNAで98%のhomologyを示すSCCA1とSCCA2の遺伝子から産生される.申請者らは.血中SCC抗原値が高値を示した上顎洞腺様扁平上皮癌患者に由来するヌードマウス移植腫瘍SCCMM株を樹立した.本腫瘍は原発腫瘍に類似した分化度の低い組織型を保持し,SCC抗原の免疫組織化学染色は陽性で,また血中のSCC抗原値も移植腫瘍の増大に伴って上昇したことから,SCC抗原の高発現機構を解析するのに適した系と考えられた. 移植腫瘍から,DNA, RNAおよびタンパクを抽出し,SCCA1とSCCA2のゲノムDNAレベルでそれぞれ特異的に増幅するプライマーを設定して半定量的PCRを行い遺伝子増幅を検討した.つづいてRNAよりcDNAを作製し,SCCA1とSCCA2のcDNAをそれぞれ特異的に増幅するプライマーを設定し,半定量的なRT-PCRを行いmRNAの発現量を検討した.またウエスタンブロット法を用いて,SCC抗原の発現量を検討した.なお対照として,ゲノムPCRには正常ヒト由来末梢血白血球を,頭頸部癌株CaSki, KB, Detroit562, SCCKN, HSGを用いた. その結果,SCCMMにおいて,SCCA1,SCCA2遺伝子のコピー数は正常白血球と同じで,SCC抗原遺伝子の増幅は認められなかった.一方mRNAレベルでは,SCCMMについで発現の強かったCaSkiと比較して,SCCA1で80倍,SCCA2で120倍と,他の細胞株に比して著しい高発現を示した.さらにタンパクレベルでは、CaSkiの15倍の発現を認めた. SCCMMにおいて,SCC抗原遺伝子の増幅は認められなかったが,mRNAレベルでの高発現が見出されたことから,SCC抗原タンパクの高発現は,転写レベルの亢進によることが示された.しかし,mRNAレベルよりもタンパクレベルの方が低いので,転写後の発現調節機構があることも示唆された.
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