唾液腺癌の中でも腺様嚢胞癌は高悪性度の腫瘍であり、局所浸潤能が強く、高率に遠隔転移をきたす。そこで本腫瘍の悪性度や発癌過程における分子機構を明らかにすることで外科療法における安全域の設定や遺伝子治療などに反映することが可能となると考える。 本研究では、細胞周期チェックポイント機構において重要な役割を演じている遺伝子やその産物を腺様嚢胞癌を用いて細胞周期の正と負の両面から検索・解析し、癌細胞の特異性を明らかにすることにある。 研究材料は手術より得られた10%ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片、27例を対象とした。癌抑制遺伝子であるp53蛋白の発現を免疫組織化学的手法にて検出した。その結果、12例に発現を確認したがp53蛋白の発現と予後に関連性は認められなかった。そこでp53依存性および非依存性に誘導される細胞周期抑制因子であるp21蛋白の発現を評価した。本腫瘍におけるp21はp53に依存性して発現が誘導される可能性が考えられ、また組織型が高分化になるほど発現率が増加し、さらにリンパ節転移群においてはその発現率が減少する傾向を認めた。 今後、In situ hybridization法、およびin situ PCR法を用いて細胞周期を亢進させる因子(サイクリン/サイクリン依存性キナーゼ、Myc、E1A、E2F2など)あるいは抑制する因子(p15、p16、p19、p27)などの検索を行う予定である。
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