本研究の目的は、Porphyromonas gingivalis(Pg)の線毛を抗原に用いた末梢血による歯周病のスクリーニング検査確立のための基盤を得ることである。本年度、天然線毛に対するヒト末梢血抗体のIgGサブクラス特異的な定量的ELISA法を確立した。すなわち、Pg菌体より生化学的に分離・精製した主線毛を、抗体価測定用の固相化抗原とし、これに段階希釈した被験血清を反応させ、結合した血中抗体を各IgGサブクラス特異的ビオチン標識mAbで検出した。異なるサブクラス間での抗体価の比較を可能にするために、同一プレート内に線毛の代わりに抗ヒトカッパ軽鎖モノクローナル抗体(mAb)を固相化したウェルを用意し、ここにヒト血清の代わりに既知濃度のカッパ鎖を有する4種のヒトIgGサブクラス精製標品の段階希釈を反応させ、これを線毛抗体検出と同じIgGサブクラス特異的mAbで検出することにより、抗線毛抗体サブクラス検量用の標準反応曲線を得た。反応条件の至適化により、異なるサブクラス間の抗体価の比較が可能となった。また、検出用標識mAbの他のサブクラスに対する交叉反応は無視できるレベルにあることが確認された。至適化された条件を用いて、以前に抗Pg線毛抗体価が総IgG抗体の相対抗体価として測定された保存血15験体について、サブクラス特異的に抗体価の定量を行ったところ、平均±SDのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4は各々3.96±6.26、7.78±8.82、0.21±0.29、0.28±0.76μg/mlという結果が得られ、抗原非特異的IgGサブクラスの分布と比べ、線毛特異抗体におけるIgG2とIgG4の増加傾向が示唆された。また個人のサブクラスの分布は個性に富み、このことから、サブクラス特異的に抗体価を測定することにより、IgG全体としての線毛抗体測定では明らかになっていない新しい知見が得られる可能性が示唆された。被験者数を増やし、各サブクラス別の診断学的意義の検討を進める。
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