フィブロネクチン(Fn)は細胞外基質タンパクの1つであり、感染症の発症においては細菌の標的物質として重要視されている。私の所属する研究室では、心内膜炎原因菌のひとつであるGranulicatella (Abiotrophia) adiacensの固相化ヒトFnへの付着能を阻害する抗Fnモノクローナル抗体(mAb ; Fynit-I01)を樹立し、これがFn分子のポリペプチド中央領域を認識することを明らかにしている。菌体表層のFn結合物質を同定・解析するための菌体受容体を認識するmAbを得る目的でFynit-I01に対する抗イディオタイプmAbの作製を試みた。Fynit-I01を同系統のBALB/cマウス、アロジェニックのA/Jマウスに免疫したところ、Fynit-I01に対して結合するものが18株、Fynit-I01およびG.adiacensの両者に結合性を有する可能性のあるものが28株得られた。抗イディオタイプ抗体産生ハイブリドーマ細胞46株のにおけるG.adiacensとFynit-IO1の両者に結合性を有するかどうか更にELISAにて検討したところ、1株に反応がみられた。この1株は、G.adiacensの表層物質を認識するモノクローナル抗体として確立された。今回用いた機能的抗リガンド抗体に対する抗イディオタイプ抗体を作製することによって、リガンドの受容体を解析するという方法論が、細菌のフィブロネクチン結合性物質の解析に有用であることが示唆された。
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